2016年1月31日日曜日

手が汚れるのがキライ

子供は、砂遊びが好きで、絵具遊びが好きで、泥んこになるのが好きで、
手や服が汚れるの何てお構いなしに、無邪気に遊ぶもの―。


大人はそう思い込んでいますよね。
でも、実はそうではない子もいっぱいいます。


娘は二人とも、手が汚れる遊びが大嫌いでした。
素手で砂遊びをするのは嫌がるし、裸足で遊ぶなんてもってのほか。
工作で糊が手についた日にはもう、永遠におしぼりで拭いています。


娘が通っていた幼稚園では、 自分の体や段ボール、もしくは先生に
絵の具を使って落書きをしまくるというファンキーなイベントがありました。

年中・年長のときは慣れてきたことと大人になってきたこともあって、一応大丈夫でした。
しかしやっぱり体が汚れるのは不愉快らしく、時々無心に絵具を拭いていました。

年少の時は、大変でしたね。
出だしからお友達に顔を汚されて、以降40分、段ボール基地から出てきませんでした。


















クラスに30人いたら、1~2人はこの行事に参加したがらない子がいます。
おそらく3~4人は、イヤだなと思いつつも周りの勢いに流されて参加している子がいたでしょう。

後さき考えずにウッキャーと絵の具を頭からかぶりまくってる男子は保護者に大人気でしたが、
私はいやそーな顔をしてしぶしぶ参加している子供たちを、とてもいとおしく思いました。


そういう子たちは手や皮膚の感覚が鋭いんですよね。
だから異物が少しでも体にへばりついてたら不快に感じる、とても自然なことです。
それだけのセンサーの持ち主なら、きっと将来は0.1mmの誤差も出さないような精密部品を生み出せるでしょう。
そういう才能は大切にしたいですよね。


しかし、多くの大人は、無邪気でおおらかな子供を好みます。
そして、いちいち手を拭いたり裸足になるのを嫌がる子を不審に思ったり、叱ったりします。
感じ方が他の子と違うことで、親が不安を感じたりイライラしたりすると、
子供は自分の感覚に自信が持てず、罪悪感を持つようになり、やがて感想を言わなくなります。

誰とも共有できない感覚を小さいころから抱えていることは、
成長するうえで大きな影響があるのではないかと心配です。
手が汚れるのを嫌がって端っこで見学していたあの子たち、
いまも元気にしていることを願います。


最近は子供が手が汚れるのを嫌がると、
すわ「ウチの子は発達障害では!?」と疑う人が増えています。
たしかに発達障害の子には感覚過敏の子が多いのですが、
感覚が鋭いから発達障害とむすびつけるのは気が早すぎます。
するとクラスに4~5人は発達障害ってことになりますよ。多すぎ。


感覚過敏の子は、高性能なんです。
カメラで言うとハチドリの羽ばたきをもとらえる高感度カメラ、
マイクで言うと10m先のひそひそ話をもとらえる高性能集音マイクです。
高性能の機器はそれだけ繊細だから環境を選ぶし、
メモリや電力をくうのですぐにつかれてしまいます。


大切なのは感覚の鋭さを責めることではなく、
鋭い感覚を持ったままこの世でどう生きていくかを、一緒に考えることです。









2016年1月9日土曜日

福笑いは笑えない

お正月遊びってありますよね。
凧あげ、コマまわし、羽子板・・・。
「福笑い」もその一つです。 

幼児の頃、人並みにそういった遊びをしてみようと、
美術館のイベントなどに行ってみたりしたのです。

好きなパーツを自分で選んでオリジナル福笑いを作るのですが、
小さい子にはお姉さんが目の前で見本を見せてくれます。

たまたま娘の担当になった人が独創性あふれるお姉さんで、
「見て見て!おねーさんこんなの作ったよ♪」 と見せてくれたお手本の福笑いが、
まさにオカルトの領域。


美術員の人が作ったホラー福笑いなのでシャレにならない怖さ。カラーでお見せできないのが残念。












もちろんお姉さんはイカした冗談のつもりでやってくれたのですが、
冗談が通じない緊張型神経質幼児にはインパクトのありすぎる冗談で、
娘は奥歯キリキリいわして完全にフリーズ。
人は本当に怖い時は涙なんかでませんよねー。


よくある子供の反応としては、
「なんじゃこれー」とゲラゲラ笑うか、「おかしいよコレー」とツッコミを入れるか、
怖がったとしてもその時だけで、翌日には忘れているものだと思います。

しかしやたら記憶のいいアスペさんは、
3年くらいは根に持っていましたね。
「ふくわら、コワイ」って呪文のように唱えていました。
福笑いのおもちゃだけでなく、福笑いって言葉だけでもうダメ。


福笑いは、リアルとは違うものをあえて作って笑う遊びですが、
リアルと違うことに必要以上に違和感を感じる人は、笑えるどころか恐怖の対象になります。
どっちが正しいリアクションというわけではありません。

8歳になった今では、福笑いは笑えるようです。
強い違和感はあるのかも知れませんが、
経験を重ねることによって「これは大丈夫」「これは笑うところ」
と学習したのだと思います。

他の子と同じように正月遊びに興じる娘ですが、
たどってきた道はちょっと変わっているのです。